成功をもたらす「報徳」の心

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人に悩みや不幸をもたらせば、自分も悩み、不幸になる。まさに「因果応報」です。逆に、人に喜びや幸福をもたらせば、まわり回って、自分に喜びや幸福が訪れる・・ということになるでしょう。

二宮金次郎(尊徳)というと、その業績はほとんど忘れられ、昔はどこの小学校の校庭にもあった、たきぎをしょって、本を読んでという銅像の記憶から、いまや多くの人には、「勤勉な子ども」というイメージしかないようです。が、彼は優れた農民指導者であり、小田原藩再興の立役者であり、今日の信用組合の生みの親でもありました。

その二宮金次郎の思想の根本にあったのは、報徳の心です。それには、こんなエピソードが添えられます。ある日、金次郎は、十分にわいていない風呂に入ってしまいました。上のほうは熱いのだけれど、下のほうは水なのです。しかたなく、熱い湯を身体のほうにかき寄せようとしましたが、指の間からもれてしまって、少しも温まりません。そこで今度は、手前から湯を押し出すようにしてみます。すると、まわり回って、背中のほうから熱い湯がめぐってきたのです。このとき「報徳」の哲学を発見したというわけです。

およそ世の中に喜びを押し出していれば、金もまわり回って、後ろのほうから戻ってくる。そう考えた金次郎は、疲弊した農村を立て直すために、「報徳社」を組織しました。そのシステムはこうです。まず金次郎が金貸しから金を借りる。それを困っている農民に低利で貸しつけ、月賦で返還させる。それをまた資金にして回転させるのですから、一種の「農民信用金庫」といえるでしょう。

この報徳社は、だれに金を貸すかという決め方もまたユニークで、「いちばんまじめに働いているのに、いちばん金に困っているのはだれか」をメンバーに投票させ、その票の多かった者を選ぶのです。そして、その票を入れた者は、その人物の保証人となる。つまり、金を借りたい者は、まじめに働いて信用を得ねばならないし、借りた者は、仲間の信用を裏切らないように、また必死に働く。これで荒廃した農村にも活気が戻ったのです。

世の人々に悩みを与えれば、必ず、悩みはなんらかの形で自分に返ってくるし、喜びを与えれば、喜びが帰ってくる。金の流通過程において、人に悩みを与えると、どこで報復を受けるかもしれません。とんでもない大病にかかるかもしれない。会社そのものが傾くかもしれない。脱税その他で投獄されるかもしれない・・。

それは、以前において、「苦しいお金、悲しいお金」を取り扱っていたからです。「報徳」とは、こういうことです。「ぜひとも、買って喜び、売って喜ぶような商売をやっていかなくてはいけない」と、金次郎はいっています。「借りてしまえば、売ってしまえば、こっちのもの」では、必ず処罰を受けるでしょう。自分がそのタネをまいているのですから。

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